赤字になりにくい収益構造(損益分岐点売上高)
昨今、景気変動や新型コロナウイルスの蔓延などにより、業界によって売上高の乱高下が続くような状況にあります。このような売上変動リスクが大きい中、重要となるのが「赤字になりにくい収益構造」です。会社の理想は、売上高が小さくなっても黒字を維持できるような状況だといえます。それでは、どのような収益構造だと赤字になりにくいのか、解説してきたいと思います。
(1)変動費と固定費
まず、変動費と固定費というものについて簡単に説明します。「変動費」とは、売上高の増減に伴って変化する費用のことをいいます。例えば、売上原価などは、原則として売上高が2倍になれば2倍程度になりますよね。一方で、家賃など売上高が変化しても金額が変わらない費用もあります。こういった費用のことを「固定費」といいます。
例えば、売上高1,000万円、変動費200万円、固定費400万円であれば、売上高が2,000万円(2倍)になったら、変動費400万円、固定費400万円となるわけです。ちなみに、売上高に対する変動費の割合のことを「変動費率」といいます。上記の例で言うと、変動費率は20%になります。
(2)損益分岐点売上高
次に、損益分岐点売上高について解説します。ずばり、これは「この売上高を超えないと赤字になる」という売上高のことをいいます。先ほどの「売上高1,000万円」「変動費200万円」「固定費400万円」の例でいうと、固定費400万円は売上高が0円でも発生する訳ですから、この400万円分の利益を出さなければ、会社は赤字になってしまいます。
それでは、400万円分の利益を出すためにはどれだけの売上が必要でしょうか。先ほど、確認したように、この会社の変動費率(売上高に対する変動費の割合)は20%です。裏を返すと、売上高から変動費を差し引いた利益は、売上高に対して80%となります。この80%が必要な利益400万円に相当すればよいわけですから、赤字にならないために必要な売上高は、400万円÷80%=500万円となります。実際に計算してみると、以下の通りです。
売上高500万円-変動費100万円(=500万円×変動費率20%)-固定費400万円=0円
きれいに、利益が0となったことが確認できますね。このように、利益が0となる売上高のことを損益分岐点売上高といいます。
(3)赤字になりにくい収益構造
当然ながら、損益分岐点売上高は低いほど赤字になりにくい収益構造となります。では、損益分岐点売上高が低くなるための要素はどのようなものか、計算式から考えてみましょう。先ほどの具体例の計算より、損益分岐点売上高の計算式は以下のようになります。
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)
つまり、損益分岐点売上高が低くなるための条件は、「固定費が小さい事」「変動費率が低い事」この2点です。逆にいえば、家賃や人件費を抑え固定費を削減する、原材料費などを抑え変動費率を下げることにより、会社が赤字になりにくくなるのです。