意思決定の仕組みづくり
意思決定とは
意思決定とは、ある目標を達成するための実現手段について、複数の選択肢の中から、最適なものを選ぶことです。
中小企業の経営者は、日々の現場において、会社の業績に直結するさまざまな意思決定を迫られていると思います。日々の意思決定は大きなものでなくても、その積み重ねが会社の業績に後々大きな影響をもたらすかもしれませんから、中小企業の経営者にとって、意思決定のスピードと質を高めることは切実な課題だと思います。
意思決定のプロセス
意思決定には、問題解決案の選択のように現在起きていることに対処するための意思決定や、経営の進路や事業戦略など今後の方針を選択する意思決定などがありますが、いずれの場合においても意思決定のプロセスは概ね以下の流れになります。
① 問題や課題の特定、目標設定
② データ・情報の収集、分析
③ 問題解決や課題達成の選択肢の作成
④ 選択肢を比較・評価のうえ、最適なものを選択(=意思決定)
⑤ 選択案の実施、実施後の結果・効果を検証
意思決定に必要な要素
多くの場合、以下の要素をもって意思決定が行われます。
(1)判断材料(データ・情報)
各種データ、分析結果や選択肢などの情報のほか、関係者や有識者との対話から得られる情報、常日頃収集し蓄積された情報などを「判断材料」として意思決定が行われます。
【データ分析の例】
・管理会計(※)による分析
➣時系列での比較分析(長期時系列、前年同期比など)
➣予算と実績の比較分析(予算実績管理)
➣責任部署別、商品カテゴリー別などの売上・利益分析(部門別業績管理)
※管理会計:意思決定や業績評価などの材料として活用することを目的とした社内向けの会計手法
・ベストケース、ワーストケースの想定
最も妥当と思われる「ベースケース」のほか、想定が全てうまくいった場合の「ベストケース」と、ことごとく想定通りに行かなかった場合の「ワーストケース」の3パターンを考えます。
これらを想定したうえで意思決定を行うことで、以下のような効果が期待できます。
– 3パターンの前提条件と想定結果を見ることで、ベースケースの妥当性を判断しやすくなります。
– ワーストケースを知っておくことで、リスクを踏まえた意思決定が可能となります。
– ベストケース、ワーストケースに備えるための対応について、議論ができるようになります。
【選択肢となる代替案から選択する手法の例】
・意思決定マトリクス
– 複数の代替案を定量的に評価し優劣を見える化する意思決定のフレームワーク
– 評価項目は、意思決定の目的や代替案の特性によって3~5つ程度、選定する
<評価項目の例>
問題解決案の場合:対策効果、コスト、実現可能性など
新規事業の場合:独自性、優位性、収益性、将来性など
・Pros and Cons(プロズ&コンズ、プロコン)
代替案のメリット&デメリット、良い点と悪い点、あるいは代替案に対する賛成意見&反対意見を並べて判断材料とするフレームワーク
(2)意思決定の仕組み
意思決定が経営者の頭の中で完結する場合もあると思います。しかし重要な経営課題については、できるだけ意思決定プロセスを踏まえて決定することが望まれます。そのとき必要になってくるのが、意思決定を行う場であり、またそれを有効活用するための仕組みづくりです。
こういった「意思決定の仕組み」を持つことによって、より合理的、かつ従業員の納得感が高い意思決定を行うことができます。
【意思決定の場】
意思決定を行う場(経営会議など)を設けて、重要な経営課題については、ここで意思決定を行います。
・会議までの段取り、開催タイミング、参加者などの概要を決めます。
・代替案(選択肢)と判断材料を揃え、それを意思決定の場にもっていく仕組みを作ります。
※ここでのポイント
・意思決定の結果、どこを目指すのか、という目標を共有しておきます。
・議事進行、ファシリテーションが重要です。
【議論の場の活用】
・意思決定の前段階として、問題や課題について「議論の場」を設け、参加者の共同作業により論理的な検討を行います。そこで合意された代替案や判断材料を踏まえて意思決定を行うことで、より実効性の高い結論になることが期待できます。
※留意点
・集団で合意を得ようという場合、早く合意形成しようという力が働いて適切な判断・評価ができなくなってしまう所謂「グループシンク」と呼ばれる現象が起きることがあるので注意が必要です。
(3)経験、直感
直感で意思決定を行うのは合理的でないと思われるかもしれません。しかし、多くの経験を積み重ねてきた経営者が、その蓄積したデータ・情報に基づいて下す直感的な意思決定は、ときに論理的思考により導出された結論より、結果的に正しいことがあります。
特に、不確実性が高く変数が多い論理構成になる場合や、データ上では優劣つけがたい代替案の選択の場合などは、直感による意思決定もアリだと思います。
ただし、直感に基づく意思決定を行った場合、後付けでも良いので論理的な裏付けをしておくことが望ましいと思います。それは、意思決定プロセスにある「実施後の結果・効果を検証」を行い今後の意思決定の質の改善に繋げるためであり、また従業員の納得感を高めるためでもあります。
✓創業期から次のステージに進むにあたり、意思決定の仕組みを整えておきたい。
✓先代から事業承継を受けたが、先代の影響力ややり方が残っていて、合理的な意思決定がしづらい。
✓意思決定しても、それが社内で着実に実行されない。効果を出すところまで繋がらない。
ご提供サービスの例
創業期は、チーム内でビジョンが共有され密にコミュニケーションできる状態にあって、その場でタイムリーに意思決定を行い問題解決していくことが多いと思います。しかしそれがもう少し大きいチームになったときには、意思決定の仕組みを整えておかないと、合理的かつスムーズな意思決定ができなくなる可能性があります。
また事業承継・事業譲受して間もない時期は、先代の影響力ややり方が社内に隠然として残っていて、旧来通りの慣習や思考法に基づく意思決定になってしまったり、従業員が意思決定に従って動いてくれないことがあります。
こういった未整備な意思決定プロセスや社内統制の状況から脱却するために、意思決定から実行までの仕組み作り、組織や制度の整備などをご支援いたします。
経営課題に関する意思決定を行うときに、意思決定に必要十分な選択肢と判断材料を用意すること、経営会議など意思決定の場づくりをしっかり行うこと、そして意思決定事項が実行に移されたあとも進捗確認を行い経営会議などで必要な軌道修正を行うことなどによって、経営の質は格段に向上します。経営会議を会社の司令塔に変える仕組みづくりをご支援いたします。
月々の売上・利益の結果を見ながら必要な意思決定や軌道修正を行う際に活用できるのが、予算実績管理や部門別(カテゴリー別や責任部署別など)の業績管理です。これらの作成・運用に関するご支援をいたします。
<予算実績管理>
予算と実績の差異を分析し、それを踏まえて、必要な改善策、リカバリー策を実施することによって、事業計画の実現性を高めることができます。
<部門別業績管理>
責任部署別や商品カテゴリー別の売上・利益を管理することによって、事業運営上の課題を絞り込むことができ、必要な意思決定をタイムリーに行うことができます。
日々の現場で起きている問題や、月々の経営数値に表れる数値の悪化などは、事象のなかの表面化した一部にすぎないということがあります。ロジックツリーや特性要因図など論理的思考の手法や経営数値分析の手法により、根本的な原因を究明し経営課題を可視化する仕組みづくりをご支援いたします。
これらは、あくまで当社提供サービスの一例です。ほかにも、様々な課題に対応していますので、お気軽にご相談ください。