なぜ人事制度が必要か?

 人事制度は、ほぼすべての会社に存在しているといって過言ではないと思います。少なくとも、10人以上の社員(厳密には、常時10人以上の労働者)がいる会社においては就業規則の作成が必須となる関係から人事制度も作られることになりますし、就業規則がない小規模事業者においても、人事制度に類するような考え方はあることかと思います。

 では、なぜこの人事制度は必要なのでしょうか。上記のような就業規則作成のためなどの法的側面以外で、経営的な側面でその必要性を解説します。

(1)総人件費コントロールのため

 人事制度が敷かれている場合、今年の分は当然として、将来的にどれくらいの人件費負担が発生するのか高い制度でシミュレーションすることができます。例えば、評価が5段階あるのであれば、平均として全社員が3をとったものとして昇給額を計算し、今年の給与に足し合わせることだけでも、来年の給与の概算を出すことができます。このような人件費の予測ができるようになると、会社の経営計画作成に大きく役立つこととなります。会社の費用の中でも人件費は大きなウェイトをしめますから、人件費を高い精度で試算することで将来の会社業績の予測ができますし、逆に会社が赤字の模様なのであれば、場合によっては人件費をどこまで抑えなければならないかなどの判断をすることもできます。

(2)社員モチベーションの向上のため

 社員は目標を持って働くことで、そのモチベーションが向上することが様々な研究結果で知られています。この目標とは業務上の目標や役職的な目標など様々ですが、賃金の目標も当然そのうちの1つです。人事制度が敷かれていることにより、社員も5年後、10年後の自分の年収を予測することができ、モチベーションの向上やライフプラン作成の一助として寄与することとなります。

 さらに、人事制度の中の評価制度の評価項目がしっかりと整備されている場合、社員は「自分がどのような視点で評価されているのか」を意識して業務をこなすこととなります。つまり、社員は評価項目に対して高い評価を取るような行動を日ごろから取る可能性が高くなります。これは、社員の主体的な業務遂行を促すことだけでなく、社員が会社にとって有意義な行動を取ることにもつながります。

 このように、人事制度は、人件費コントロールやモチベーションの向上の面から必要性があるといえます。複雑な制度を作る必要は一切ありませんので、まずは自社に合った人事制度を作成してみるのはいかがでしょうか。

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